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「web-magazine GYAN GYAN」では、第三者的な視点でロックを検証してきましたが、当サイトではプライベートな感覚で、より身近にロックを語ってみたいと思います。
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  ★ プロフィール
HN:
matsuZACK
年齢:
62
性別:
男性
誕生日:
1962/02/15
自己紹介:
matsuZACKです。
“下天のうちをくらぶれば~”の年齢に到達してしまいました。
ミュージシャンを目指したり、
音楽評論家や文筆業を目指したり、
いろいろと人生の奔流に抵抗してきましたが、
どうやらなすがままに、
フツーの人におさまりつつあります。
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★2009/03/01 (Sun)
SHM-CDという、
高音質のCDが世に出て、
早や半年が過ぎましたが、
この間に購入したCDの中で、
もっとも聴く機会が多いのは、
エリック・クラプトン御大の、
『いとしのレイラ』です。



SHM-CD仕様の『いとしのレイラ』は、
LPレコードなど比較にならないほど音質が向上していて、
とくにギターの音が鮮明に聴こえるので、
たいへん感動モノです。

さて、
『いとしのレイラ』が名盤である、
などということを、
ここであらためて語るつもりではありません。
私が驚いたのは、
なにげなく目をやった、
このアルバムの歌詞の世界です。

たとえば、「ベル・ボトム・ブルース」…。

床を這いつくばりながら、
君に会いに行く姿を見たいかい?
もう一度やり直してくれと、
君にすがりつく姿を見たいかい?
俺は喜んでそうするさ…、
このまま消え去りたくないから。
頼むから、
もう一日だけチャンスをくれ。
このまま消え去りたくないんだ。
君の心の中にずっと住み続けていたいのさ…。

スゴイですね…。

のたうちまわっていますよ。

女性に捨てられてボロボロになり、
それでもなお、
あきらめきれない男の心情が、
切々と歌われているということでしょうか。

男の怨念っておそろしいですね、
こういう男がストーカーになるのでしょうか?
いやいや、
女性のみなさん、
男は基本的にこうなのです。
ここまで開き直って、
堂々と宣言(?)することは稀ですが、
大なり小なり、
このような感情を強く持っている生物なのです。

というのも、
女性の記憶はリセット型で、
過去の記憶の上に、
新しい記憶を重ねていくことができる。
その際、
過去の記憶は塗りつぶされてしまう…。
ところが、
男の記憶は蓄積型で、
過去の記憶を消去できずに、
新しい記憶が蓄積されていく。
過去の記憶は鮮明に残っていて、
いつでも思い出すことができる、
などと言われているように、
男の脳の特徴がそのような思考を生み出しているのです。

その説は、
よく世間で言われていることですが、
私はまったくその通りだと思っております。
つまり、
モトカノに対して、
“このまま消え去りたくないんだ。
君の心の中にずっと住み続けていたいのさ…。”
と思う部分は、
すべての男に共通した、
切なる願望といえるかもしれません。

しかし…、
それを、
ここまで堂々と歌えますか?

あらためて、
エリック・クラプトンって、
スゴイ人です。

『いとしのレイラ』の原題は、
『LAYLA and other assorted love songs』ですから、
収録曲は程度の差こそあれ、
だいたいこのような内容の歌詞になってるのですが、
これをいわゆる“ラブソング”と呼んでよいのでしょうか?
だって、
どの曲も「ベル・ボトム・ブルース」のように、
一方的に男の側から心情を吐き散らしているだけで、
男女双方が共有している“ラブ”には至っていないのですから…。

ときには、
強がって恰好つけたり、
女性などどうでもいいというような発言があったり、
まぁ…やりたい放題であります。

そして、
トドメが、「レイラーッ!」。

あろうことか、
人の妻の名前を連呼して、
「いとしい、いとしい」と悶えまくるという…。
やりたい放題もいい加減にしなさいと言いたくなるような、
トンデモナイ結末が用意されているのです。

エリック・クラプトンおそるべし…。

『いとしのレイラ』は、
男の煩悩うずまく作品集だったのです。
エリック・クラプトンは己の煩悩を、
女性に対するありとあらゆる感情を、
まるで除夜の鐘のように、
全世界に向かって放っています。

だいたいギタリストという人種は、
えーかっこしいというか、
恰好をつけたがる人が多くて、
クラプトンのように、
恥も外聞もなく自己をさらけ出すような人は、
他に例を見ません。

近い例としては、
ジョン・レノンの『イマジン』がありますが…、
理想郷を夢見た直後に、
「俺はただのヤキモチ焼きさ」と開き直り、
世界平和と、
恋人の過去を、
同レベルで語ってしまう…、
一人の男の、
思考の振幅の激しさを素直に表現していますが、
クラプトンのように煩悩をまき散らす程ではありません。
(余談ですが、
ジョンのヤキモチは半端ではなかったようで、
ヨーコの過去の男性経験数を聞き出したのみならず、
全員の姓名まで書かせたということです。)

クラプトンの場合はジョンと違い、
世界平和など一言も登場せず、
ただ…、
ただひたすらに煩悩にまみれ、
のたうちまわっているのです。

感情のおもむくまま煩悩に焼き焦がれ、
それを芸術作品として発表してしまう。
私には、
そんな人生を送ることができる人が、
うらやましくて仕方ありません。

“男のロマン”ってヤツかなぁ…?

そうそう、
“男のロマン”で思い出しましたが、
男には、
漂泊願望なるものがあるそうです。

つまり、
何もかも捨てて、
一人気ままにフラフラしたい…という願望。

私は、
種田山頭火(たねださんとうか:俳人)が大好きで、
彼のように、
晩年は漂泊を続け、
独り、
人里離れた庵でのたれ死ぬ、
なんてことに本気でアコガレたりします。



以前、
家族にそのような話をしたら、
「信じられない」と言われて、
白い眼で見られたことがありますが、
どうやらこのような心境は、
女性には理解できないもののようです。

山頭火が崇拝していたとされる、
尾崎放哉(おざきほうさい:俳人)という人は、
もっと徹底していて、
一流大学を出たエリートサラリーマンでありながら、
酒で身を持ち崩し、
持病の胸が悪化したことを期に、
妻子を捨て、
ひとり死に場所を求め、
瀬戸内海に面した庵で、
孤独をかこって死に至るのですが、
死期を悟ってからは、
計画的に食べものを減らし続け、
自然に死ねるよう我が身を弱らせた、
ということです。

山頭火も放哉も、
自分の人生を中途でリセットし、
漂泊の果てに、
死を迎える準備をしたのです。
周囲の迷惑などお構いなしに、
人生の終盤を自分の納得するように、
自分自身で仕上げる。
これができるということもまた、
うらやましい限りです。

私は、
一人で知らない街をフラフラするのが好きで、
ときに、
「このまま、どこかへ消えたらどうだろう?」
などという、
とんでもない誘惑にかられることがあり、
自分でも困惑することがあります。

たった一度の人生なのだから、
煩悩まみれになることも、
漂泊してのたれ死ぬことも、
思い残すことなくやればいいと思いますが、
実際には、
さまざまなものに囲まれ、
たくさんのものを背負ってしまっている現在、
まず実現することは不可能といえるでしょう。
いや、
実現させることは簡単なのですが、
一歩踏み出す勇気が出ないものです。
ゆえに、
私は凡人の域を出ません。

クラプトンや山頭火の、
煩悩にまみれ、
漂泊の果てに生まれた作品に触れるにつけ、
男のロマンだなぁ、
とアコガレるのでありました。
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