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「web-magazine GYAN GYAN」では、第三者的な視点でロックを検証してきましたが、当サイトではプライベートな感覚で、より身近にロックを語ってみたいと思います。
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  ★ プロフィール
HN:
matsuZACK
年齢:
62
性別:
男性
誕生日:
1962/02/15
自己紹介:
matsuZACKです。
“下天のうちをくらぶれば~”の年齢に到達してしまいました。
ミュージシャンを目指したり、
音楽評論家や文筆業を目指したり、
いろいろと人生の奔流に抵抗してきましたが、
どうやらなすがままに、
フツーの人におさまりつつあります。
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★2008/11/09 (Sun)
私的ロック評論シリーズの第6弾です。

第6回は、
URIAH HEEPの『DEMONS AND WIZARDS』です。



『悪魔と魔法使い/ユーライア・ヒープ(DEMONS AND WIZARDS/URIAH HEEP)』
(1972年発表)

SDE1
1.魔法使い
 (The Wizard)
2.時間を旅する人
 (Traveller In Time)
3.安息の日々
 (Easy Livin')
4.詩人の裁き
 (Poet's Justice)
5.連帯
 (Circle Of Hands)

SIDE2
6.虹の悪魔
 (Rainbow Demon)
7.オール・マイ・ライフ
 (All My Life)
8.楽園
 (Paradise)
9.呪文
 (The Spell)

ディープ・パープルに熱中していた高校2年の夏頃、
誰に勧められたのかは忘れてしまいましたが、
「パープル好きなら、きっと気に入ると思うよ」
と友人に言われて手に入れたのが、
ユーライア・ヒープの
『対自核(LOOK AT YOURSELF)』でした。

友人はおそらく、
“キーボードが入ったハードロック”という視点で、
私にこのアルバムを勧めたと思われますが、
思惑通り、
私は『対自核』を気に入ってしまいました。

パープルが、
“ギターが強い、キーボード入りのハードロック”とすれば、
ヒープはさしずめ、
“キーボードが強い、キーボード入りのハードロック”
といったところでしょうか。

さすがに、
ギターではパープルに一歩譲るとして、
ヒープにはそれを補って余りある、
強力な武器がありました。

それは、コーラスワークです。

パープルではありえない、
多層構造のヴォーカルによるパートが、
このグループの“売り”でした。

私は、
クィーンのジョン・ディーコンが、
ミュージックライフのインタビューで、
「ヒープ、大好き」と言っていたことを思い出し、
あのクィーンが影響を受けたほどなんだから
このコーラスワークはスゴいんだ、
と妙な納得をしてしまいました。

クィーンにはそれほど興味を持てなかった私ですが、
なぜかヒープのコーラスワークには感動を覚えたのです。

このコーラスワークが、
芸術的といえるほど美しく、
ヒープ・サウンドの耽美的な面を強調していて、
暴力的な部分とうまくバランスをとっているのでした。

私は、
思春期に激しい振幅をもって交互に現れる、
わけのわからない暴力衝動と、
美しいものに対する感動の、
両方を満足させるグループに出会った、
そんな気持ちでいっぱいになりました。

そして、
『悪魔と魔法使い』が、
『対自核』の次に発表された作品だということを知った私は、
早速それを購入するためにレコード店へ駆け込んだのです。

レコード店でアルバムを手にした私が
最初に感動したのは、
イエスのアルバムジャケットで有名な、
ロジャー・ディーンによる、
神秘的なジャケット・ワークでした。

綺麗だなぁ…中身もこういう感じなのかな?

私はイエスの一連の作品、
そう、
いわゆるプログレッシヴ・ロックの音を思い浮かべました。

そしてその予感は、
1曲目の「魔法使い」が始まった瞬間に、
現実のものとなったのです。

ああっ…プログレっぽい、
深くて綺麗な音…。

神秘的な光景をドラマティックに描いた「魔法使い」は、
これ以降、
現在に至るまで、
私のフェイバリット・ソングになっています。

『悪魔と魔法使い』は、
『対自核』のサウンドを整理し、
もっと丁寧に作り上げたという印象で、
『対自核』をパープルの『イン・ロック』にたとえるなら、
こちらは『マシン・ヘッド』ということになる、
暴力的で荒削りな部分を抑えて、
整合性を強く打ち出した、
そんな印象の作品です。

とくに、
LP時代のA面の出来が素晴らしく、
前述の「魔法使い」を別にしても、
「詩人の裁き」のイントロの短いコーラスや、
「連帯」の荘厳なオルガンの響きなど、
本当に鳥肌が立つほどの美しさを感じる瞬間が
何度も現れます。
音の感触はまさに“プログレッシヴ・ロック”。
アルバム・ジャケットから受けたイメージが、
そのまま音になっていたのです。

パープルでは、
より暴力的な『イン・ロック』を好んだ私が、
ヒープに関しては、
暴力的な部分を抑えた『悪魔と魔法使い』を好んだのは、
私が両者に対して求めたものが違っていたからでしょう。

私はヒープに、耽美的なものを求めたのです。

さてこの他、
前作『対自核』と大きく違ったのは、
ベーシストの存在感でした。
『対自核』と『悪魔と魔法使い』の間では、
ベーシストとドラマーが交替しています。
もともとこのグループは、
ギターの手数が少ない分、
ベースが細かいフレーズを弾く傾向にあったのですが、
新加入の名手ゲイリー・セインは、
ベーシストというよりは、
低音メロディ担当とでも言いたくなるような、
たいへん美しい旋律を奏で、
全体のサウンド作りに大きく貢献しています。

ベーシストがウマいと、音が変わるんだ…。

私が、
バンドにおけるベーシストの重要性に気がついたのは、
ユーライア・ヒープが最初でした。

そして、
このようなヒープ・サウンドに、
リッチー・ブラックモアのような
エキセントリックなギタリストが加わったら最強なのでは、
と思うようになり、
それが私の当面の目標になりました。
それは高校2年頃のことだと記憶していますが、
私はマジメにユーライア・ヒープになりたい、
と願うほどになったのです。

しかし、
それはすぐに、
コーラスをとりながら演奏する難しさと、
コーラスでハモるには
リードヴォーカル級のトレーニングが必要である、
という大きな問題に当たり、
あっけなく挫折してしまいました。

理想のサウンドに出会ったものの、
それを表現することの困難さを知った私。
人生とはこのようなことの繰り返しと言えますが、
さて、
その後どのような方向へ向かうことで、
この現実に折り合いをつけたのでしょう?
それは、
次回以降のお楽しみということにして、
今回はあらためて
『悪魔と魔法使い』の素晴らしさを堪能することにしましょう。
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★ ILLUSTRATION BY nyao