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「web-magazine GYAN GYAN」では、第三者的な視点でロックを検証してきましたが、当サイトではプライベートな感覚で、より身近にロックを語ってみたいと思います。
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  ★ プロフィール
HN:
matsuZACK
年齢:
62
性別:
男性
誕生日:
1962/02/15
自己紹介:
matsuZACKです。
“下天のうちをくらぶれば~”の年齢に到達してしまいました。
ミュージシャンを目指したり、
音楽評論家や文筆業を目指したり、
いろいろと人生の奔流に抵抗してきましたが、
どうやらなすがままに、
フツーの人におさまりつつあります。
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★2008/11/02 (Sun)
私が高校生の頃(1970年代後半)、
再結成前のディープ・パープルが発表したアルバムの中で
もっとも評価の低い作品は、
第2期では『紫の肖像(Who Do We Think We Are)』、
第3期では『嵐の使者(Stormbringer)』でした。

いずれも、
メンバーチェンジ直前に発表されたものであったため、
リッチー・ブラックモアがヤル気をなくしていたから
作品として充実していないのだという、
たいへん説得力のある理由がつけられており、
多くの音楽ファンもそう思っていたようです。

『紫の肖像』にはたしかに、
その理由が当てはまるようですが、
『嵐の使者』はどうでしょう?
本当にそうだったのでしょうか?

私は高校1年の終わり頃に、
初めて『嵐の使者』を聴いたのですが、
そのときの感想は、
「悪くない…んじゃない?」
どうしてこの作品の評価が低いのか、
理解できませんでした。

とくに、
従来のパープル・スタイルを踏襲した「嵐の使者」に続く、
LP時代のA面の出来が素晴らしく、
今でも年に数回は聴いているほどです。

「愛は何よりも強く(Love Don't Mean A Thing)」は、
グレン・ヒューズが、
どれだけスティーヴィー・ワンダーを敬愛しているか、
を理解できるナンバーです。
ハードロックというよりは、
少しハードなソウルという感じの曲調に乗って、
ディヴィッド・カヴァーディルと
グレンのツインヴォーカルが見事なハーモニーを作ります。

つづいて、
グレンが歌う「聖人(Holy Man)」。
デヴィッド・ボウイがこの曲を気に入って、
カバーしたいと許可を求めたようですが、
パープル側がなぜか却下して、
仕方なくボウイは、
この曲によく似た、
ビートルズの「アクロス・ザ・ユニヴァース」をカバーして、
アルバム『ヤング・アメリカンズ』に収録した、
というエピソードがありますが、
なるほど、
たしかに彼が歌ったらよく似合いそうな曲調です。

そして、
「ホールド・オン」。
これは文句なくカッコいい曲。
いわゆるファンキー・ハードロックの名曲でしょう。
とにかくノリがよく、
さりげなく使われているクラビネットが、
さらに雰囲気を盛り上げています。

ちなみに、
B面も同じような構成で、
パープル・スタイルの
「嵐の女(Lady Double Dealer)」につづき、
ファンキーな「ユー・キャント・ドゥ・イット・ライト」、
直線的な「ハイ・ボール・シューター」、
ファンキーというよりディスコビートに近いリズムに乗って、
叙情的なメロディを歌う「ジプシー」とつづき、
ラストは、
生ギターによる「幸運な兵士(Soldier Of Fortune)」です。

なにしろ、曲がいい。
これに尽きます。

ヤル気をなくしていたとされる
リッチー・ブラックモアのプレイですが、
これだけソフトな曲が並んでいるので、
いままでのようなハードなプレイを
意識的に控えたのではないでしょうか?
リッチーは下積み時代に、
歌手のバックバンドやスタジオワークが多かったので、
けっして
“KYな(空気読めない)”ギタリストではないはずです。
『嵐の使者』におけるリッチーのプレイは、
アルバム全体の雰囲気に合わせた結果であり、
けっしてヤル気がなかったわけではないでしょう。
いままであまり取り入れることのなかった、
ワウやスライドを使っていたりして、
逆に意欲的な部分が感じられるほどです。

一般的には、
従来のパープル・スタイルである、
「嵐の使者」や「嵐の女」
がコンパクトにまとまっているため、
スケールが小さくなったと思われたようですが、
作品をよく聴き込むと。
リッチーをはじめとした、
パープルのメンバーが、
新しい分野の音に挑んでいることがわかるはずです。

『嵐の使者』で聴かれる、
ファンキー・ハードロックという分野の音を、
イギリスではじめて一般的にしたのは、
じつはディープ・パープルではないか、
という説があります。
いや、
それ以前に、
レインボーとホワイトスネイクの
ファーストアルバムの音が、
『嵐の使者』の延長上にあることは間違いなく、
いろいろ考えると、
たいへん重要な作品であることがわかります。

そして当時から、
ファンはこのことをよくわかっていて、
じつは、
私と同じ感想を持つ人が多く存在していたのです。
そして『嵐の使者』は、
“隠れ名盤である”と伝えられていきました。

その結果…。

あれから30年ほどが経過した現在、
いろいろな場所で見ることができる、
ディープ・パープルのアルバム紹介では、
『嵐の使者』は名盤として評価され、
重要な位置にある作品である、
と書かれるようになりました。

『嵐の使者』は、
ファンの声と時間の経過が評価を変えた作品です。

そして、
この事例からもわかるように、
ディープ・パープルの不幸は、
既成路線から脱しようとして
新しいことに挑んでも、
それがリアルタイムでは、
正当に評価されなかった点に尽きるのです。

SHM-CDで出てるべ〜↓
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