「web-magazine GYAN GYAN」では、第三者的な視点でロックを検証してきましたが、当サイトではプライベートな感覚で、より身近にロックを語ってみたいと思います。
★ カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
★ フリーエリア
★ 最新コメント
[01/25 matsuZACK]
[01/23 shiba]
[01/02 matsuZACK ]
[01/02 ういん]
[12/27 shiba]
★ 最新トラックバック
★ プロフィール
HN:
matsuZACK
年齢:
62
性別:
男性
誕生日:
1962/02/15
自己紹介:
matsuZACKです。
“下天のうちをくらぶれば~”の年齢に到達してしまいました。
ミュージシャンを目指したり、
音楽評論家や文筆業を目指したり、
いろいろと人生の奔流に抵抗してきましたが、
どうやらなすがままに、
フツーの人におさまりつつあります。
“下天のうちをくらぶれば~”の年齢に到達してしまいました。
ミュージシャンを目指したり、
音楽評論家や文筆業を目指したり、
いろいろと人生の奔流に抵抗してきましたが、
どうやらなすがままに、
フツーの人におさまりつつあります。
★ ブログ内検索
★ 最古記事
★ P R
★ カウンター
★2008/09/14 (Sun)
3、『The Dark Side Of The Moon』
1973年3月、ピンク・フロイドは、『The Dark Side Of The Moon(狂気)』を発表。アルバムは、全英2位、全米1位を記録。最終的には、これ以降の15年間、連続724週にわたって全米トップ200にランクインされるという、怪物的なセールスを記録することになる。
アルバムの基本コンセプトは、前述の「If(イフ)」における、“彼岸の世界”を普遍化して昇華させたものである。日常の世界に存在している、“彼岸の世界”。そして、誰でも自分の中に抱えている、“彼岸の世界”。ロジャー・ウォーターズは、あらゆる角度から、“彼岸の世界”を語り尽くしたのである。“彼岸の世界”は、邦題の“狂気”と置き換えてもよいだろう。
そしてロジャーが、“彼岸の世界”の向こう側に見ていたものは、“死”である。
すべての人間にとって、等しく受け入れなければならない現象が“死”である。“死”は、容姿、貧富、能力にかかわりなく、誰にでも訪れる。命あるものは、この世に生まれ落ちた瞬間、すでに“死”を宿命づけられているのだ。
しかし、命あるものにとって、“死”を意識することは苦痛である。そして、“死”を意識することによって生じるものは、“自己の存在に対する不安”だ。「自分は何者であるか?」、「自分はどこからやって来たのか?」、「自分はどこへ行こうとしているのか?」、「自分の存在価値とは何か?」。多くの先達たちは同じ問いを繰り返し、“自己の存在に対する不安”から逃れるために、さまざまなことを試みた。それがいわゆる、創作活動全般である。
自己の存在を証明するために、人は絵を描いたり、文章を書いたり、そして曲を作ったりするのだ。
ところで、人間の老化現象のひとつに、“痴呆”がある。“痴呆”は、死の恐怖から解放されるために、自然が与えた恩恵であるといわれている。“痴呆”によって“彼岸の世界の住人”になってしまった人は、もはや自己の存在に対する不安にかられ、死の恐怖に苛まれることもなくなるのである。そう考えると“彼岸の世界の住人”になることは、真の意味で魂を自由に開放することかもしれない。
ロジャー・ウォーターズは身近に、その実例を見た。
若く美しいまま時間を止めてしまった、シド・バレット。ドラッグで癒されることのなかった彼の魂は、“彼岸の世界の住人”になることで永遠の安息を手に入れた。
『The Dark Side Of The Moon(狂気)』のコンセプトは、シド・バレットに対する憧憬を、人類普遍のテーマに昇華したものである。この、きわめてレベルの高いテーマを、ロジャー・ウォーターズは簡潔な言葉でまとめ上げた。アルバムを発表してもけっして歌詞を掲載しなかった彼等は、このアルバムではじめてジャケットに歌詞を印刷した。この事実から、彼がこのアルバムの歌詞の完成度に、いかに自信を持っていたかが伺える。
そして、その歌詞に負けない、完成度の高い音。まったく隙のないアレンジは、ほぼ完璧と言っても過言ではあるまい。まさに、ロック史に残る、究極の1枚である。
『The Dark Side Of The Moon(狂気)』は、製作した当人たちの予測をはるかに超えるレベルで売れまくった。ピンク・フロイドはついに、シド・バレットを超えることに成功したのだ。
ロジャー・ウォーターズがシド・バレットの幻影から解放されたことは、つづいて1975年9月に発表された『Wish You Were Here(炎)』収録の、「Shine On You Crazy Diamond(狂ったダイアモンド) 」によって明らかである。
『The Dark Side Of The Moon(狂気)』の“動”に対して、対極の“静”を連想させる穏やかなサウンドに乗って、ロジャーはクールに歌うのであった。
キミの狂気は固い結晶になってしまった
ひたすら世の中を超越して輝き続けてくれ
一段高い境地に到達したからこそ見えた、狂気のカリスマの真の姿がここにある。私は、シド・バレットに対する永遠の賛歌を発表したこの時点で、ピンク・フロイドはその活動を完了させるべきだったと思っている。しかし、彼等はその後も活動を継続させた。
『The Dark Side Of The Moon(狂気)』の成功がもたらしたものは、シド・バレットの幻影から解放されることだけではなかったのである。
自分達に対する、過剰なまでの自信。
ロジャー・ウォーターズは、今度は自分のコンセプトに基づいて、ピンク・フロイドを率いて行くことを決心したのである。
1973年3月、ピンク・フロイドは、『The Dark Side Of The Moon(狂気)』を発表。アルバムは、全英2位、全米1位を記録。最終的には、これ以降の15年間、連続724週にわたって全米トップ200にランクインされるという、怪物的なセールスを記録することになる。
アルバムの基本コンセプトは、前述の「If(イフ)」における、“彼岸の世界”を普遍化して昇華させたものである。日常の世界に存在している、“彼岸の世界”。そして、誰でも自分の中に抱えている、“彼岸の世界”。ロジャー・ウォーターズは、あらゆる角度から、“彼岸の世界”を語り尽くしたのである。“彼岸の世界”は、邦題の“狂気”と置き換えてもよいだろう。
そしてロジャーが、“彼岸の世界”の向こう側に見ていたものは、“死”である。
すべての人間にとって、等しく受け入れなければならない現象が“死”である。“死”は、容姿、貧富、能力にかかわりなく、誰にでも訪れる。命あるものは、この世に生まれ落ちた瞬間、すでに“死”を宿命づけられているのだ。
しかし、命あるものにとって、“死”を意識することは苦痛である。そして、“死”を意識することによって生じるものは、“自己の存在に対する不安”だ。「自分は何者であるか?」、「自分はどこからやって来たのか?」、「自分はどこへ行こうとしているのか?」、「自分の存在価値とは何か?」。多くの先達たちは同じ問いを繰り返し、“自己の存在に対する不安”から逃れるために、さまざまなことを試みた。それがいわゆる、創作活動全般である。
自己の存在を証明するために、人は絵を描いたり、文章を書いたり、そして曲を作ったりするのだ。
ところで、人間の老化現象のひとつに、“痴呆”がある。“痴呆”は、死の恐怖から解放されるために、自然が与えた恩恵であるといわれている。“痴呆”によって“彼岸の世界の住人”になってしまった人は、もはや自己の存在に対する不安にかられ、死の恐怖に苛まれることもなくなるのである。そう考えると“彼岸の世界の住人”になることは、真の意味で魂を自由に開放することかもしれない。
ロジャー・ウォーターズは身近に、その実例を見た。
若く美しいまま時間を止めてしまった、シド・バレット。ドラッグで癒されることのなかった彼の魂は、“彼岸の世界の住人”になることで永遠の安息を手に入れた。
『The Dark Side Of The Moon(狂気)』のコンセプトは、シド・バレットに対する憧憬を、人類普遍のテーマに昇華したものである。この、きわめてレベルの高いテーマを、ロジャー・ウォーターズは簡潔な言葉でまとめ上げた。アルバムを発表してもけっして歌詞を掲載しなかった彼等は、このアルバムではじめてジャケットに歌詞を印刷した。この事実から、彼がこのアルバムの歌詞の完成度に、いかに自信を持っていたかが伺える。
そして、その歌詞に負けない、完成度の高い音。まったく隙のないアレンジは、ほぼ完璧と言っても過言ではあるまい。まさに、ロック史に残る、究極の1枚である。
『The Dark Side Of The Moon(狂気)』は、製作した当人たちの予測をはるかに超えるレベルで売れまくった。ピンク・フロイドはついに、シド・バレットを超えることに成功したのだ。
ロジャー・ウォーターズがシド・バレットの幻影から解放されたことは、つづいて1975年9月に発表された『Wish You Were Here(炎)』収録の、「Shine On You Crazy Diamond(狂ったダイアモンド) 」によって明らかである。
『The Dark Side Of The Moon(狂気)』の“動”に対して、対極の“静”を連想させる穏やかなサウンドに乗って、ロジャーはクールに歌うのであった。
キミの狂気は固い結晶になってしまった
ひたすら世の中を超越して輝き続けてくれ
一段高い境地に到達したからこそ見えた、狂気のカリスマの真の姿がここにある。私は、シド・バレットに対する永遠の賛歌を発表したこの時点で、ピンク・フロイドはその活動を完了させるべきだったと思っている。しかし、彼等はその後も活動を継続させた。
『The Dark Side Of The Moon(狂気)』の成功がもたらしたものは、シド・バレットの幻影から解放されることだけではなかったのである。
自分達に対する、過剰なまでの自信。
ロジャー・ウォーターズは、今度は自分のコンセプトに基づいて、ピンク・フロイドを率いて行くことを決心したのである。
PR