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「web-magazine GYAN GYAN」では、第三者的な視点でロックを検証してきましたが、当サイトではプライベートな感覚で、より身近にロックを語ってみたいと思います。
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  ★ プロフィール
HN:
matsuZACK
年齢:
62
性別:
男性
誕生日:
1962/02/15
自己紹介:
matsuZACKです。
“下天のうちをくらぶれば~”の年齢に到達してしまいました。
ミュージシャンを目指したり、
音楽評論家や文筆業を目指したり、
いろいろと人生の奔流に抵抗してきましたが、
どうやらなすがままに、
フツーの人におさまりつつあります。
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★2008/06/29 (Sun)
私的ロック評論シリーズの第3弾です。

第3回は、
AEROSMITH の『ROCKS』です。



『ロックス/エアロスミス(ROCKS/AEROSMITH)』
(1976年発表)

SDE1
1.バック・イン・ザ・サドル
 (Back In The Saddle)
2.ラスト・チャイルド
 (Last Child)
3.地下室のドブねずみ
 (Rats In The Cellar)
4.コンビネイション
 (Combination)

SIDE2
5.シック・アズ・ア・ドッグ
 (Sick As A Dog)
6.ノーバディズ・フォールト
 (Nobody's Fault)
7.ゲット・ザ・リード・アウト
 (Get The Lead Out)
8.リック・アンド・ア・プロミス
 (Lick And A Promise)
9.ホーム・トゥナイト
 (Home Tonight)

私がロックに入門した、
1975〜76年当時、
“新ロック御三家”と呼ばれていたのが、
KISS、QUEEN、そしてエアロスミスでした。

派手にマスコミに露出していた、
KISSやQUEENに比べ、
エアロスミスは幾分控えめで、
シングル曲も少なかったこともあり、
なかなかその実像が把握できませんでした。

そんな1976年の暮のこと、
親しい友人が『ロックス』を購入し、
「ハンパじゃねーっ!」と騒ぎ始めたので、
私はそれを借りることにしました。

ものスゴく寒い日であったことを覚えています。

帰宅してすぐに、
誰もいない自宅のステレオで、
『ロックス』をかけてみたところ…、
いきなり「バック・イン・ザ・サドル」が、
かつて耳にしたことのない重低音で、
私に迫ってきました。

「…!」

私は、
他に誰もいないことを幸いと、
ステレオのヴォリュームを、
思いっ切り上げて、
そのヘヴィな音の世界を堪能しました。

「…!」

正直なところ、
言葉が出なかった、
という以前に、
表現する言葉すら見当たらなかった、
という状態…。

“カッコイイ”と叫ぶしか対応できない。

私は、
いままで体験したことのない、
異様な興奮状態に陥っていたのです。

というのも、
LP時代のSDE1のたたみかけ方は尋常でなく、
「バック・イン・ザ・サドル」
「ラスト・チャイルド」と続いて、
完全なトランス状態に入っているにも関わらず、
「地下室のドブねずみ」で、
さらに追い打ちをかけるように
スピード・アップをするので、
テンションは上がる一方になるのです。

1980年代のロンドンのヘヴィ・メタル・カフェで、
あまりに激しくヘッド・バンギングしたおかげで、
脳の血管が切れて亡くなった人がいる、
という話を聞きましたが、
『ロックス』の前半でも、
それは十分あり得ると思えます。

それは、
ハードロックっていいなぁ…っと実感する瞬間、
まさに、死んでもいいやっ、と思える瞬間です。

「シック・アズ・ア・ドッグ」で始まる、
LP時代のSIDE2は、
SDE1ほどのテンポではなく、
ゆったりした曲が多いものの、
その分、
重低音が腹の底にズシズシ響きます。

そして、
「ゲット・ザ・リード・アウト」
「リック・アンド・ア・プロミス」
と続くあたりで、
アルバムの第2のピークがやってきます。

その後、
どれだけ盛り上がって終わるのだろうか、
と期待していると、
最後は、
切なく「ホーム・トゥナイト」が始まり、
静かに、
そしてドラマティックに盛り上げ、
エンディングを迎えます…。

ストーブも点けずに
『ロックス』を聴いていた私ですが、
「ホーム・トゥナイト」を聴き終える頃には、
寒い日であったにもかかわらず、
汗びっしょりになっていたことを覚えています。

これほどカッコいいサウンドがこの世に存在するものなのか。

今から考えると滑稽ですが、
このときは真剣にそう思ったものです。

さて、
一段落して、
インナースリーブに目をやると、
メンバーの、
ステージやレコーディング時の写真が、
びっしりコラージュしてあり、
ミーハーな私は、
またもや、
ここから一撃をくらってしまったのでありました。

「ストーンズっぽいなぁ…」
「こっちのギタリスト、イカしてるじゃん」

ジョー・ペリーとの出会いでした。

私の理想とする、
ロック・ギタリストのルックスとファッションがそこにありました。
長髪、
レザー、
ウェスタンブーツ、
インドシルクのスカーフ、
ターコイズやシルバーのアクセサリー…。

ジョー・ペリーになりたい…。

これまた、
今から考えると滑稽ですが、
このときは真剣にそう思ったものです。

私が高校入学と同時に髪を伸ばし始めたのは、
間違いなくジョー・ペリーからの影響です。

もうひとつ、
私は『ロックス』から、
その後の音楽人生に影響を及ぼすことになる、
“ファンキーなリズム”を教えられました。
エアロスミスのリズムは細かく、
さらに語尾がハネる特徴があります。
(それは、「ラスト・チャイルド」や
「ゲット・ザ・リード・アウト」のリフに顕著です。)

このおかげで、
リズムが単調にならず、
またベッタンベッタンした、
ただ重いだけのサウンドにならずに済んでいるのです。

私がこれ以降、
ファンキーなハードロックのリフを好むようになったのは、
これまた、
間違いなく『ロックス』からの影響です。

その後、
長いこと、
『ロックス』における、
重低音サウンドは私の研究対象となりました。
しかし、
あれから30年以上が経った今になっても、
これを超えるアルバムにはお目にかかることができませんでした。

『ロックス』が、
いかに突出したアルバムであったか、
おわかりいただけたことでしょう。
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★ ILLUSTRATION BY nyao