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「web-magazine GYAN GYAN」では、第三者的な視点でロックを検証してきましたが、当サイトではプライベートな感覚で、より身近にロックを語ってみたいと思います。
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  ★ プロフィール
HN:
matsuZACK
年齢:
62
性別:
男性
誕生日:
1962/02/15
自己紹介:
matsuZACKです。
“下天のうちをくらぶれば~”の年齢に到達してしまいました。
ミュージシャンを目指したり、
音楽評論家や文筆業を目指したり、
いろいろと人生の奔流に抵抗してきましたが、
どうやらなすがままに、
フツーの人におさまりつつあります。
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★2009/02/22 (Sun)
私的ロック評論シリーズの第10弾です。

第10回は、
RUSHの『MOVING PICTURES』です。



『ラッシュ/ムーヴィング・ピクチャーズ(RUSH/MOVING PICTURES』
(1981年発表)

SIDE1
1,Tom Sawyer
2,Red Barchetta
3,YYZ
4,Limelight

SIDE2
1,Camera Eye
2,Witch Hunt
3,Vital Signs


JOHNNY,LOUIS&CHARや
THE POLICEに注目していた当時、
私にはもうひとつ、
大好きなトリオ編成のロックバンドがありました。
それが、ラッシュです。

ラッシュといえば、
高校の初め頃、
友人の家で「A FAREWELL TO KINGS」(1977年発表)
を聴いたことがあり、
リフ中心のハードロックではあるものの、
メタリックで少しプログレがかった独特のサウンドに、
衝撃を受けたものです。



ところがその後、
ラッシュは話題に上ることもなく、
新譜の情報も聞こえてこなくなりました。

私が、
そんなラッシュに、
ふたたびお目にかかったのは、
大学に入学した1980年のこと。
それは、
彼らが「PERMANENT WAVES」という新譜を発表したが、
日本での発売元が決まっていないという、
なんとも情けない記事でした。



私にはその記事を読んだ瞬間に、
なにかヒラメクものがあったようで、
さっそく輸入盤店へ行き、
「PERMANENT WAVES」を手に入れました。

これがたいへんすばらしい内容で、
私はそれまでに買い逃していたラッシュの旧作、
「HEMISPHERES」「A FAREWELL TO KINGS」「2112」を
一気に揃えたほどでした。

そして年が明け1981年になり、
相変わらず日本での発売元が決まっていない状態でありながら、
一部のファンが待ちに待った状況で発表されたのが、
この「MOVING PICTURES」です。

ラッシュの魅力は、
前述のように、
あくまでもリフ中心のハードロックではあるものの、
プログレっぽい曲構成と、
冷たくメタリックな感触のサウンドにあります。
わかりやすく例えるなら、
レッド・ツェッペリンとイエスを融合したような音、
とでも言いましょうか。
その独特の無機質なサウンドは唯一無比のものです。

加えて、
メンバーそれぞれが驚異的なテクニシャンで、
ニール・パートは極限に近いドラムキットに、
ベルやパーカッション類を装備し、
アレックス・ライフスンはエレキギターのみならず、
ガットギターや12弦ギターを使用、
ダブルネックギターを縦横無尽に操りながら、
足元でタウラス・ペダル・シンセを踏む。
圧巻はベースのゲディ・リーで、
ベースを弾きながら歌うだけでなく、
時に片手でシンセを弾き、
足元でタウラス・ペダル・シンセを踏み、
ベースと12弦ギターのダブルネックを操るという、
大道芸人のようなプレイをします。
このようにラッシュは、
3人で可能な限りの音を出し、
トリオの極限の姿を示しているのです。

しかし、
このスタイルを追求した結果、
1978年発表の「HEMISPHERES」では片面1曲、
(しかも、
前作「A FAREWELL TO KINGS」の最後の曲からつながっています。)
裏面3曲というたいへんマニアックな内容になってしまい、
本人たちもかなり煮詰まってしまったようです。



そこで、
「PERMANENT WAVES」では曲を短めにし、
当時の最新の音楽であったレゲエなどを取り入れ、
バンドを時代に合ったサウンドに変化させたのです。

「MOVING PICTURES」はその延長にあり、
ニューウェイブ的な音や、
ネオ・ヘヴィ・メタリックの音を意識し、
かなりモダンなサウンドに仕上がっています。

元々、
近未来的なコンセプトが強いバンドだったので、
このようなサウンドによくマッチしたといえるでしょう。

ギターのアレックス・ライフスンは、
「HEMISPHERES」あたりから、
例の「BOSS CE-1」(コーラス・アンサンブル)を使用し、
かなり歪んだ音ではあるものの、
独特の「シャラ〜ン」とした、
音の広がりを感じさせるようになりました。

アレックス・ライフスンは、
通常のロックでは使わないような、
テンションの効いた、
ミョーなコードを多用する人で、
そういう意味では、
THE POLICEのアンディ・サマーズと同系統といえるでしょう。

当時の私が、
そんなプレイに夢中にならないはずはなく、
それは一時期、
ラッシュのコピーバンドを結成したほどであり、
このアルバムからは、
「Red Barchetta」と「Limelight」を演奏したことがあります。

「MOVING PICTURES」では、
従来の彼らが得意とした、
変拍子ビシバシの曲は、
インストの「YYZ」ぐらいで、
後は比較的ストレートなビートに仕上がっています。

「Red Barchetta」「Camera Eye」「Vital Signs」といった曲からは、
どことなくTHE POLICEの香りがします。
(この後の彼らには、本当にTHE POLICEのようになる時期があります。)

そして、「Tom Sawyer」と「Limelight」は、
文句なしの名曲でしょう。

私はラッシュを究極のロックバンドの姿ととらえ、
ゲディ・リーのようなベーシストを探しました。
しかし、
そのようなベーシストには、
現在までお目にかかったことはなく、
世界のロック界でもフォロワーが存在しません。

ラッシュがどれだけ、
ワン&オンリーの存在であるか、
おわかりいただけるでしょう。

そこで私は、
トリオ+ワン(ヴォーカリスト)のユニットで、
オリジナル曲を模索し始めたのです。
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★2009/02/11 (Wed)
私的ロック評論シリーズの第9弾です。

第9回は、
THE POLICEの『REGATTA DE BLANC』です。



『白いレガッタ/ポリス(THE POLICE/REGATTA DE BLANC』
(1979年発表)

SDE1
1.孤独のメッセージ
 (Message In A Bottle)
2.白いレガッタ
 (Regatta De Blanc)
3.イッツ・オールライト・フォー・ユー
 (It's Alright For You)
4.ブリング・オン・ザ・ナイト
 (Bring On The Night)
5.死の誘惑
 (Deathwish)

SIDE2
6.ウォーキング・オン・ザ・ムーン
 (Walking On The Moon)
7.オン・エニイ・アザー・デイ
 (On Any Other Day)
8.ひとりぼっちの夜
 (The Bet's Too Big Without You)
9.コンタクト
 (Contact)
ダズ・エブリワン・ステア
 (Does Everyone Stare)
ノー・タイム・ディス・タイム
 (No Time This Time)

JOHNNY,LOUIS&CHARがデビューした1979年のことです。
ミョーな曲がヒットチャートの上位にランクインされました。

その曲は、
祭り囃子みたいなリズムと、
ちょっと哀愁のただようアルペジオのイントロで始まり、
スカスカで隙間だらけの空間に、
アタマから抜けるようなハイトーンのヴォーカルが印象的でした。

それが、ポリスの「孤独のメッセージ」。

いままで聴いたことのない、
新しいサウンドとの出会いでした。

私は当初、
彼らのルックスを見て、
パンクロック系のグループだと勘違いしましたが、
ポリスのデビューは、
パンクロック以降のニューウェイブシーンの幕開けだったのです。

私が注目したのは、
まずリズム面の斬新なアプローチ。
ポリスは、
レゲエやスカといった最先端のリズムと、
従来のロックンロールの融合を図りました。
これは「孤独のメッセージ」や、
それ以前の曲、
「ロクサーヌ」、「キャント・スタンド・ルージング・ユー」
などで使われているパターン。
スネアをあまり強調しないので、
祭り囃子のように聴こえるのです。

そして次に、
「孤独のメッセージ」につづいてシングルカットされた、
「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」で聴かれる、
極端に音の密度を少なくすることで、
逆に空間的な広がりを生み出す効果。
これは、
イントロのジャキーンという、
D sus4のコードにディレイをかけているのですが、
後ろに音がほとんどない状態なので、
その効果は絶大です。

このように、
まったく音が出ていない空間をうまくコントロールするには、
トリオという編成が最適です。
ポリスは、
クリームのように、
演奏者同士が技術的に競い合い、
音を埋め尽くすことをしないトリオだったのです。
音が少ないというトリオのウィークポイントを、
逆にセールスポイントにしてしまったのです。
トリオなのにリードギターを弾きまくらないのです。(笑)

これはおもしろい。
私は「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」を聴いて、
ついにアルバムを買う決心をしました。
それがポリスにとって2枚目のアルバムになる、
「白いレガッタ」でした。
結果として、
私のギタープレイに決定的な影響を及ぼした1枚となったのです。

前述の「孤独のメッセージ」が優れたナンバーであることは、
あらためて言うまでもありません。
音を採り始めたところ、
9thを使ったアルペジオであることが判明したのですが、
それは指が長くないと出来ないプレイで、
アンディ・サマーズは小柄な割には指が長いのか?
などと変な所に感心した記憶があります。

「キャント・スタンド・ルージング・ユー」の間奏を発展させた、
「白いレガッタ」は私がもっとも好きなナンバーです。
予定調和とアドリブ、
無音の空間とバンドが一体となって疾走する瞬間が
見事なバランスを取っており、
この曲にポリスサウンドが凝縮されている、
と言っても過言ではないでしょう。

「イッツ・オールライト・フォー・ユー」は、
彼らにしては珍しく、
ストレートなビートのロックンロールで、
単純に心地よい、
とってもイカしたナンバー。

「ブリング・オン・ザ・ナイト」は、
「孤独のメッセージ」同様、
マイナーなアルペジオとレゲエの融合が新鮮なナンバーですが、
一方で、
スティングのベースが、
モロにレゲエのフレーズになっているところがおもしろい。

「死の誘惑」は、
「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」同様、
ギターのカッティングにディレイをかけて、
不思議な音空間を生み出すことに成功しています。
この曲のようなリズムに合わせた残響は、
デジタルディレイだからこそできる技であり、
ポリスが、
テクノロジーの進化もうまく使っているグループであることがわかります。

このアルバムはとにかく、
LP時代のA面の出来が素晴らしく、
何回聴いても厭きません。
それに反して、
B面はそれほどでもなく、
前述の「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」以外は、
それほど聴きこんだ記憶がありません。
まぁ…頻度とすると、
A面10回に対してB面1回ぐらいの割合だったでしょうか。

私はアンディ・サマーズの、
ニュアンスに富んだコードの使い方、
カッティングやアルペジオを中心として、
あまりリードギターを弾かないプレイに魅了されました。
また、
以前からたいへん好んでいた、
エコー系エフェクターの進化系、
デジタル・ディレイの威力を知り、
テープエコーやアナログ・ディレイと使い分けることを覚えました。

そして、
なによりも私は、
このアルバム全体で聴ける、
コードを弾き流したときに「シャラ〜ン」という独特の音揺れを生み出す、
モジュレーション系エフェクターのサウンドに魅了されました。
アンディ・サマーズは、
コーラスではなくフランジャーを
コーラスのようにセッティングして使っていたということですが、
私は当時話題になっていた、
「BOSS CE-1」というエフェックターに興味を持ち、
数年後に購入することになります。
そしてそれ以降、
私の足元には、
エコー系のエフェクターとともに、
必ずコーラスがセットされるようになるのです。

1980年前後、
ロックが大きく変化しようとしていた時期、
私のギタースタイルも大きく変化しようとしていたのです。
★2009/02/01 (Sun)
私は、
その年に初めて購入したCDを、
“初買いCD”と呼んでおります。

昨年の“初買いCD”は、
アイズレー・ブラザーズの『グルーヴィ・アイズレーズ』で、
年頭からやたらと盛り上がった記憶がありますが、
今年は系統の違う2枚のCDを同時に購入しました。

まずは、
昨年ドイツで発売された、
『THE BEST OF YARDBIRDS』。
いわゆるベスト盤です。



年末に出た「レコードコレクターズ」で、
60年代のブリティッシュR&Bシーンの特集を読んで以来、
フーやストーンズの初期、
スモール・フェイセズ、
アニマルズなどを毎日のように聴いていたのですが、
そういえば、
ヤードバーズはCDで持っていなかったなぁ…っと。
しかし今さら、
LPで持っているアルバムを買い揃えるのもどうか、
と悩んでいたときに、
このアルバムのことを思い出し、
購入するに至りました。

このアルバムには、
アルバム未収録曲やシングルB面曲を含め、
リマスターされた、
ヤードバーズの代表曲がズラリ、
29曲も収録されているのですが、
価格はたったの2,300円ということで、
たいへんお得な1枚です。

「The Train Kept A' Rollin'」と
映画「欲望」のサントラとして再録音された、
「Stroll On」がいっしょに並んでいたり、
「Happenings Ten Years Time Ago」はもちろん、
「Little Games」や「Jeff's Boogie」まで収録されていて、
満足感いっぱいの選曲です。

ヤードバーズを聴いて、
あらためて感じたのは、
やはり、
フーやストーンズの初期、
スモール・フェイセズ、
アニマルズなどと比較して、
ギターの存在感が圧倒的だということ。
すでに、
ギュイ~ンという、
いわゆる“ハードロック”的なトーンが聴ける点がスゴイ。
ジェフ・ベックもそうですが、
ジミー・ペイジなんか、
すでにZEPのフレーズを使っていたりして、
まぁ…やりたい放題ですな。(笑)

で、
「Psycho Daisies」って曲がカッコイイことを知りました。
う~ん、新発見。
まだまだ、知らない曲があるんですね。

さて、
もう1枚は、
昨年の『グルーヴィ・アイズレーズ』と同じく、
日本で編集されたアルバム、
『JAZZ SUPREME:FENDER RHODES PRAYER』。
なんだか、オシャレな感じがしません?



これには、
フェンダー・ローズという、
エレキピアノをメインに使った、
ジャズナンバーという基準で、
1970年代から現代まで、
幅広いミュージシャンの作品から選ばれた、
18曲が収録されています。

ローズは、
独特のフワ~っとした、
浮遊感あふれるトーンが素晴らしく、
トドメにレズリー・スピーカーなどをかけると、
もうこれ以上ないほど、
メロメロなトーンになってしまいます。
そうそう、
ストーンズの「愚か者の涙」のイントロで聴ける、
あの音のことです。

私は、
とくにこのトーンを好むということもあり、
タイトルを見ただけで購入してしまったのですが、
今昔のジャズ…、
それも純粋なジャズではなく、
ソウルやヒップホップといったジャンルと、
限りなく近い位置にあるような、
ジャズファンからはマガイモノ扱いされそうな、
曲ばかりが並んでいて、
それが私のようなROCK中年には、
たまらなくGROOVYに感じられ、
毎晩のように聴いています。
こういうの好きだなぁ…。

で、
なにげなく、
ライナーを読んでいたら、
ドラムスに、
ビリー・コブハムだの、
レニー・ホワイトだの、
バーナード・パーディの名前があり、
やっぱこの方々はスゴいよね、
と納得してしまったりして、
いろいろな楽しみ方ができる1枚であります。

ここ数年というもの、
紙ジャケという魔女にすっかり魅せられたおかげで、
ストレートなロックばかり聴いていたのですが、
それではやはりボキャブラリーが貧困になりそうなので、
今年は“脱ロック”の年にしたいなぁなどと…、
いえ、
ロック以外の音楽を聴いて、
ロックのオリジナルを作るという…、
そういうことですが、
そうでなければ、
おもしろくないよなーっ、
などと思う年の始めでありました。

今年もいっぱい、
いい音楽に出会えるかな?
★2009/01/27 (Tue)
過去の記事もすべて、
無事に移転を完了しました。

ただ…画像はそのまま移転できなかったので、
カンベンしてください。
(すべて貼り直すのもメンドウなので…(笑)

今後しばらくは、
このカワイ過ぎるテンプレートで行くので、
よろしくお願いいたします。
★2008/12/28 (Sun)
今回は、
16ビート系の話題が続いているので、
少しばかり、
マニアックな内容になるかもしれませんが、
私の記憶に残る、
カッコよくカッティングをキメる、
リズムギターの達人たちについて、
語ってみたいと思います。


〓レイ・パーカー・JR

1980年代に入って、
「ゴーストバスターズ」などがヒットしたおかげで、
レイ・パーカー・JRのことを
「ゴーストバスターズ」のオッサンと
記憶している人が多いようですが、
とんでもないっ。
元々この人はモータウンのスタジオミュージシャンで、
数々の名作に参加している歴戦の強者です。
(ナラダ・マイケル・ウォルデンといい、
この人といい、
やはり自分で歌わないと商売にならないのでしょうか?)
この人のプレイは、
テレキャスのカタい音で、
ジャキジャキと弾くのが特徴で、
合いの手のように入る
「シャカポーンッ」が必殺技です。
参加作品としては、
スティービー・ワンダーの
『トーキング・ブック』が有名ですが、
ギタリストとして、
より本領を発揮しているのは、
ハービー・ハンコックの
『シークレッツ』(1976年)でしょう。
(インストですから…。)
オープニングの「ドゥイン・イット」では、
これまたモータウンの名ギタリスト、
ワー・ワー・ワトスンの
トーキング・モジュレーターを相手に、
「ジャキジャキ、シャカポーンッ」で応戦し、
手に汗握る緊迫感を演出することに成功しています。

〓アル・マッケイ(アース・ウィンド&ファイヤー)

じつは私、
ヒット曲を連発する前のアースが大好きなのですが、
(『暗黒への挑戦(THAT'S THE WAY OF THE WORLD)』まで)
その中でもとくに、
『ヘッド・トゥ・ザ・スカイ』(1973年)がイチオシです。
アル・マッケイも基本的には、
レイ・パーカー・JRと同じで、
かなりエッジのはっきりした、
おかしな表現ですが“ロックっぽい”
カッティングが特徴です。
おもしろいのは、
合いの手が「シャカポーンッ」ではなく、
「ワッキョ〜ンッ」という感じになることです。
同じような奏法でも、
弾き手によって微妙に音の印象が変わる、
リズムギターにおける個性の表わし方を
感じ取ることができます。
お気に入りはやはり、
『ヘッド・トゥ・ザ・スカイ』収録の
「イーヴル」ですね。
ちょっと翳りがある、
暴力的なイメージを、
リズムギターで演出している、
素晴らしい作品です。

〓ロン・スミス(メイズ)

1970年代後半〜1980年代に活躍したメイズは、
ブラスはなく鍵盤はシンセ主体のせいか、
都会的で洗練されたクールな音が特徴でした。
ロン・スミスのギターは、
アル・マッケイによく似た、
“ロックっぽい”カッティングが特徴ですが、
バンドの楽器数が少ないせいか、
ギターの音がよく聴こえるので、
教材として最適です。
『ライブ・イン・ニューオーリンズ』(1981年)収録の
「フィール・ザット・ユア・フィーリン」
のイントロで聴けるカッティングは、
ロン・スミスらしさがよく出たプレイです。
(スタジオ盤では別の人が弾いています。)
ちなみに、
この曲のm7からm6への
コードの落とし方は、
ジョニー・ルイス&チャーの
「Head Song」のリフそのものなのですが、
竹中先輩、
そのへんのところはいかがでしょうか?

〓キャットフィッシュ・コリンズ

ジェイムズ・ブラウンのバックといえば、
ジミー・ノーランが有名ですが、
「セックス・マシーン」(1970年)の時期、
ブーツィ・コリンズ(B)と共に
JB流ファンクの確立に貢献した相棒となると、
やはり、
キャットフィッシュ・コリンズということになります。
この人は、
柔かい音で、
ソフトにカッティングをするのですが、
抜群のリズム感に支えられた切れ味はシャープで、
単調な繰り返しから、
ジワジワと盛り上げるあたりに、
非凡な才能を感じます。
ベストプレイは、
やはり「セックス・マシーン」ですが、
「ソウル・パワー」も捨てがたいですね。

〓ジョニー・ギター・ワトスン

元々はブルースギタリストですが、
1970年代中盤になると、
ソウルやファンクなども視野に入れた、
ブラックミュージックの再構築に貢献しました。
マルチプレイヤーでもあるので、
ほとんどの楽器を一人で録音するなど、
のちのプリンスに重なるイメージがあります。
この人は、
ブルース出身であることが信じられないほど、
音数が少なく、
また、
独特のペケペケした、
サスティンの効かない音で
プレイする点に特徴があります。
当然フェンダー派なのだろうと思っていたら、
そうではなく、
セミアコ、エクスプローラ、SGなどを使う、
ギブソン派だったので驚きました。
ギブソン系のギターで、
トグルスイッチを真ん中にして、
ヴォリュームを下げると、
ああいう音が出ますが、
この音でさりげなく
シャープなカッティングをキメてしまうという、
なかなかの洒落者であります。
(ちなみに、ムスタングでもこういう音が出ます。)
『エイント・ザット・ア・ビッチ』(1976年)収録の
「スーパーマン・ラヴァー」などで
真髄を聴かせてくれますが、
ギャングっぽいルックスと、
吐き捨てるようなヴォーカルもイカしています。



〓スティーヴ・クロッパー

ベタですが、
やはりスティーヴ・クロッパーは好きです。
ただ私は、
オーティス・レディングより、
ウィルソン・ピケットの方が好きなので、
この人のベストプレイとしては、
『エキサイティング・ウィルソン・ピケット』(1966年)から、
いかにもテレキャスといった感じの、
カラッとした音が印象的な
「サムシング・ユー・ガット」と、
ボンゾが叩いたらZEPじゃないか?
というハードドライビングな
「ベアフッティン」をおススメしたいところです。
けっこう、
ハードな曲でのプレイもイケていますよ。

〓アーニー・アイズレー(アイズレー・ブラザーズ)

まず、
ルックスがジミヘンです。
そのせいか、
ギターソロになると、
ファズなどを踏んでしまい、
向こうへ行ったきりなかなか戻って来てくれないので、
困り者ですが、
バッキングにまわったときのプレイは、
たいへんシャープで、
「さすが」と唸らせるものがあります。
ストラト愛好者で、
少し歪んだ音でハードにリズムを刻みます。
「ラヴ・ザ・ワン・ユアー・ウィズ」(1972年)や
「クーリン・ミー・アウト」(1978年)で、
その真髄を聴かせてくれます。

〓サイモン・バーソロミュー(ブランニュー・ヘヴィーズ)

ブランニュー・ヘヴィーズは1990年代の、
いわゆる“アシッド・ジャズ”ムーブメントの立役者。
サイモン・バーソロミューは、
1970年代のブラックミュージックを
研究し尽くしたような、
洗練されたプレイを聴かせてくれます。
たいへん刺激的だったのは、
9人のラッパーとセッションを繰り広げた、
『HEAVY RHYME EXPERIENCE: VOL.1』(1992年)で、
ラッパーが、
マシンガンのように言葉を吐き散らすのを、
しなやかなリズムギターであおり立てます。
これなどはまさに、
時代を反映させた、
ブラックミュージックの進化型、
といえるのではないでしょうか。

〓ピエール・ヴァルヴローゼム(Xレッグド・サリー)

Xレッグド・サリーはベルギー出身で、
1990年代前半にニューヨークで活動していた、
前衛派のバンドです。
ミクスチャーというのか、
ジャズとファンクとテクノをいっしょくたにして、
ヘヴィメタルっぽく仕上げましたという感じの音で、
短めの曲を次々と演奏するスタイルが斬新でした。
メンバーはいずれ劣らぬテクニシャン揃い。
ピエール・ヴァルヴローゼムは、
歪みまくった音で、
ハードなソロプレイをするのを得意としていますが、
時折見せる、
コンピューターの打ち込みに負けない速度での、
16ビートのカッティングは、
“達人”というより、
“超人”と表現した方が正しいようなプレイです。
ビル・ラズウェルがプロデュースした、
『KILLED BY CHARITY』(1993年)は、
後世に残る傑作といえるでしょう。
そういえばこの人は
ソロアルバムも出しているのですが、
オソロシくて近づくことができませんでした。

〓キザイア・ジョーンズ

BSでやっていた、
何かのライブで見たのですが、
とにかく、
おそろしくパワフルな、
16ビートのカッティングをする人で、
あまりに激しくピッキングをするためか、
ストラトのメイプル指板の、
最後のフレットあたりの塗装が
ハゲハゲになっていたのが印象的でした。
アフリカはナイジェリアの出身で、
いわゆるアフリカン・ファンクの最先端。
『リキッド・サンシャイン』(1999年)では、
1960〜70年代の
アメリカン・ブラックミュージックとは、
まったく違う文脈から出てきた、
ブラックミュージックにお目にかかることができます。
これこそ、
時代を反映させた、
ブラックミュージックの最新型、
といえるのではないでしょうか。
余談ですが、
『リキッド・サンシャイン』に収録されている、
「ファンクショナル」では、
ベースによる弾き語り、
(文字通り、ベースをジャラジャラ弾くのです。)
なども披露しているのですが、
津軽じょんがら節の三味線のような、
取り憑かれたようなプレイで、
軽くヴードゥーの匂いがします。
おそろしやおそろしや…。

ということで、
10人の達人を紹介いたしました。
おそらくこれが、
本年最後の投稿になると思います。

本年もお世話になりました。
来年もよろしくお願いいたします。
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★ ILLUSTRATION BY nyao